海の病棟の治療方針
治療に専念できる環境づくりを
海の病棟での治療の特色のひとつが、その環境にあります。潮の満ち引きや、光の流れや雨音など、自然のリズムが五感に響き、建物自体がナースステーションを扇型に中心に広がり、スタッフのやさしさが全体に注がれるつくりとなっています。そして、カウンセリングや集団治療を中心として、なるべく薬に頼らない治療方針を掲げています。
このような環境づくりの結果、常に見守られた空間で治療に専念していただけるので、外来よりも回復が早いという結果も出ております。そして、もちろん復職支援プログラムも行い、社会復帰までしっかりとサポートさせていただきます。
治療を行う上での考え方について
自然を感じられる治療環境を
多くの経験により、病室や病院の空間も治療の大切な要因であるとの観点に立ち、空気の流れを感じられる快適な病室や四季の変化がある周辺の遊歩道などを整備し、五感で自然を感じられる治療環境を提供しています。
カウンセリングを重視
精神療法、認知行動療法、作業療法、音楽療法、集団療法などの療法を症状に応じて適用し、体調の回復を目指すのはもちろんですが、これまでの生活のありかたを見なおしてもらう作業が大切になります。自分の性格、仕事や人間関係のありかた、家族との関係等について、週3回程度のカウンセリングを行います。単に体調が回復するだけでなく、退院後どうしたら職場や家族へ良い戻り方ができるのかを考えてもらいます。
建築も治療の大事な治療の道具
自然の変化を体感できる病室。曲線を多くした母性的空間。緊張しにくいベッド間の距離等に工夫をしています。(4人部屋)病室の空間は単に居住空間だけでなく、治療効果に大きな影響を与えるものなのです。
自然の体験
自然にふれあってもらう機会を治療の中に多く取り入れています。自然にふれることは、単に自然の良い空気やエネルギーに接するというだけではありません。自然の中でゆっくりとした時間を体験することは、自然と共生する生物としての自分を自覚する体験につながります。私たちのバイオリズムが自然や地球のバイオリズムと共鳴して動いていることを自覚させてくれます。
薬物以外でのストレス症状の軽減を
治療を受けられる方の意志としてなるべく薬を使いたくないとの希望が多くみられます。また、入院してこられる方の大半が体の不調が認められます。そこで、少しでも薬を少なくする手段としてアーユルヴェーダ、マインドフルネス、アロマテラピーをとりいれ、心身ともにくつろげる時間を提供しています。
うつ病の再発防止向けの対策
入院中の休養と薬物療法だけでなく、再発防止のために、体調悪化の原因となった事象まで対応するのが、治療方針の一つです。そのためには、さまざまな療法とカウンセリングが重要となります。
特にカウンセリングは、患者さん自身の問題点、あるいは今まで気付かなかった認知や対処行動について振り返ることで再発防止につなげていきます。
復職や復学への支援プログラム
多くの患者さんは、退院後は元の職場に復職することになります。このため、入院治療の後半では復職に向けた復職支援プログラムを導入します。
具体的には、職場の上司や同僚に対する対応、あるいは仕事上の処理方法の再検討、または、人間関係の負荷を取り除く方法などを具体的に集団で治療する療法となります。
入院治療の流れ
初期
入院初期は、不安や体調不良のために休養と抗うつ薬の服用、可能な方には、カウンセリングを導入していくことになります。
1週間から2週間は、慣れるまでの時間が必要になりますが、その後は、同じようなうつ病の方々との交流が始まったり、カウンセリングが深まるなど、次第に回復に向かうことになります。
規則正しい入院生活とスタッフとの交流などの治療の日々は、自宅療養で不安を抱えながらの治療と違い、症状の変化を実感していただけると思います。
中期
症状は、だいたい月単位での回復経過となります。症状が順調に回復したのを見計らい、カウンセリングを通し、とりわけ患者さんの体調悪化の原因と再発防止の対策を見つめてもらうことになります。
さらには、作業療法や音楽療法も含めた集団療法が行われます。
後期
復職への不安を払拭するため復職支援プログラムを導入し、実際の職場での仕事のあり方や人間関係の処理方法の問題点について掘り下げて、集団で治療を進めていきます。
復職支援プログラムの治療結果については、患者さん本人の同意を得て、職場へ報告を行い、職場もその報告を受けることで患者さんの復職をスムーズにすることとなります。